そんな華子さんの姿を目の当たりにし、一つの感情が渦巻いた。

涙を浮かべる藍人くんが、揺さぶり起こした感情。
このままにしてはいられない、そんな強い決意が込められた感情。


2人の顔を、交互に見比べた。


思い描いた自分になれなかったと、傷つき、くやしさに打ち震える藍人くん。

ネットに仕事を奪われ、社会的には死刑を求刑されたような華子さん。


私の渦巻く感情が、ついに爆発した。それは、ガスボンベの爆発なんて、生易しいものじゃない。石油コンビナートの大爆発ほどの衝撃。


私は華子さんの両腕をつかみ、身体を任せた。詰め寄り、問いたださずにはいられない。だって、爆発しているのだもの。


「ねえ、なんかおかしいよ。
変だよ。
華子さんも変だと思わない?

いつの間にか開けられたタマミさんの家の窓。
大川さんの病院帰りを邪魔する車。
消されたみゅーの情報。

誰かが、わたし達の仕事を邪魔してる。
誰かが、わたし達の個人情報を垂れ流している。

でも、なんで?
なんでそんなことするの?

それで、わたしだけじゃない。
わたしの周りの人も傷ついていく。

そんなのおかしい。

嫌だよ!!

そんなの、絶対
ぜぇっったい、許さない」


両手をぎゅっと握りしめ空を仰ぐと、西のあかね色に染まった空を、黒いしみのようなカラスが横切った。天頂は、灰色がかった水色の絵の具で雑に塗られ、漆黒の闇になる準備を整えている。


私はその空に向かい、天頂に跳ね返るほどの大声で叫んだ。


「絶対、犯人みつけてやる!
ずえっっったい、犯人、探し出すからーー‼」