「藍人くんが……あ、友達がね、削除するよう一晩中手を尽くして……
さほど広がってないみたいなんだけど。
でもねぇ、何の為にこんな事してると思う?
カリス姫の動画なんて、そんな注目されるほどのクオリティじゃないのよ」
と言い終えると、口元をついて出たのはため息だけ。
「確かに……
この程度の画像なら、動画サイトにゴロゴロしてるもんねー」
まるでカリス姫を知っているかのような口調に違和感を覚え、みゅーの顔を見た。みゅーの視線はパソコンの画面。
ん⁈
「ちょっ……
ちょっと、何?
これ?」
「これでしょ、カリス姫って」
みゅーが指差すパソコン画面に、私達の象徴(アイドル)織江ルーナの姿はもうない。新旧交代だなんて、とても言えない雑なクオリティの私の分身が、ぎこちない動きで踊っていた。
「これ、どこで見つけたの?!
私、サイトのアップは全部取り消したのに!!」
犯罪者あつかいで責めてしまったが、みゅーは「こんなの、いっくらでも、コピーが出回ってるよ」と、素っ気なく答えるだけだった。
そりゃあ、私だって存じてますよ。人気映像で再生数がかせげるって分かったら、職人さんが上手く取りこみ、さも自分で編集したかのようにサイトにアップすることも。でも、こんな素人が作った動画、コピーまでして載せる目的が分からない。
「コピーもそこそこ再生数伸びてるね。そのうちコピーのコピーが出回るかも」
「カンベンしてよー」
私は、目の前がまっくらになった。