誰かが……
誰かが私を見ている。自分の背後を歩く人の気配に驚き、振り向いた。
そこにはスマホの画面を食い入るように見る若い女性。歩きながら、それでもスマホの背を私の方に向け続けている。カメラレンズがとらえているのは……私?
そんな妄想にいたたまれず、顔をそむける。
顔を向けた方向には、走る乗用車。その助手席の男性が窓を開けた。男性は私を知るかのように、軽く会釈(えしゃく)した。
私の方は、全く見覚えがないのに。
地上にいる者、全てが敵になった妄想に耐えられず、視線を上空に移した。
すると病院の上方の階、白衣を着た男性が窓を開け、顔を出して見下ろしている。誰かを捜しているかのように。その視線が私を捉えると、にやっと笑顔になった……気がした。
表情など分からないほど小さな、その顔が。
……怖い………
誰かが、私を見ている。
そして、画像を撮ろうとしている。
それが全くの妄想ではない現実を突きつけられる、その恐怖たるや………
体験したことのない恐怖に、私の膝はガタガタと震えた。