「あー、明日かい?
明日は看護学校。
夏休み明けから、実習指導の仕事が入っててね。
その打ち合わせ。
事前レポート提出されてるから、それ見てきたりしてね」


「へー、派遣ってそんな仕事もあるんですか?
大変そうですね」


「大変なもんかい。
楽しいよー。
レポートに赤ペン、バシバシ入れて、ぜーんぶ再提出にしてやって……」


華子さんはニヤニヤと笑い、底意地の悪さを露呈した。

目を閉じると、『あとはー?』と可能な限りの短い言葉で学生を追い詰める華子さんと、半泣きの学生の姿が思い浮かぶ。

薄目で華子さんに視線を送り『敵多そうですね』と言ってやりたかったが、学生指導(いじめ?)に心血を注ぐ華子さんに私の助言など無駄だろう。

とぼとぼと遅い亀の歩みも、やっとで駐車場の端に着いた。


石井さんの車を目の前にし、

「あれ?
そういえば、あのひょろっと背の高い男子は?」

と、藍人くんの存在を気にかけたのは華子さんの方だった。


その言葉に、私もやっと思い出した。きょろきょろと周りを見回したが、近くに細身の学生服は見当たらない。


「あれー?
葬式の途中で抜け出しちゃったから、お姉さんに電話してくるって言って……
一緒に帰ろうって言ってたんだけどなー」