「はい、特別興味あったわけじゃないし、まっ、ちらっと見たら他のとこに飛ぼうって思ってたんですけど………

なんか珍しく、その子のツイッターは面白いっていうかシンパシーが合うっていうか、気になっちゃって。
そしたら、過去のツイートにブログはっつけてあったんで、今度はブログに飛んだんですよ。

ブログはもっと深いっていうか、本音書いてあるっていうか。
なんかこう、夢中で読んで。
気づいたら何時間も読み漁(あさ)ってて。

で過去、遡(サカノボ)ってどんどん読み進めてたら、こんな書き込みがあったんですよ。

『こっちの私もあっちの世界の私も、どっちも私には変わりない。だったら住んでて居心地がいい方にいたいと思うのは悪いことじゃにいよね』って。


実は僕そのころ、進路で悩んでたんです。

塾の先生に、九州にある全寮制の高校受験しないかって勧められてて。
この先の進路考えたら、その方がいいって。

親は割と放任なんでどっちでもいいって言ってたんだけど、なんかこう踏ん切りつかないっていうか、決められなくって。

この決断で自分の未来も決まっちゃうのかなーって、思うと……

でも……でもね。

僕、これ読んで思ったんです。

ここに残っても九州に行っても、僕は僕だ。
なら、居心地がいいと思う方にいるって決めても、いいんじゃないかって」


藍人くんは強い視線を私に送った。


「僕はね、莉栖花さんのブログの言葉に、自分に正直になる勇気を貰ったんです」


私を見つめるその眼差しに、私は良心の呵責を抑えられない。


そのログに憶えはあった。

それは高校1年生の冬。

『ネットばかりしていて将来どうするつもりなんだ』とか『ネットじゃ仕事はできないんだぞ』とか耳にタコができるほど言われていた。そんな私が、親と自分自身への言い訳につぶやいただけの書き込みだった。


どうせ私のブログなんて、誰も見ていないと思ったから。そんなただの愚痴を、過大解釈してくれていたなんて。