三列目のシートは車幅の半分にぎりぎり2人分のシートを確保している。その狭さと密着ぶりに私はパニック気味だが、いつもなら私より緊張しいの藍人くんはおどろくほど落ちついていた。


「話ってなに?」


もちろん藍人くんの方なんて見れない。正面の華子さんの後頭部を見ながら、なんとか尋ねた。


「ちゃんと説明したくて。
いや、しなきゃなんないと思ってて。
僕がカリス姫を知った理由。
莉栖花さんがカリス姫だって分かった理由」


藍人くんの口調はいつになくハキハキとしている。今日絶対言うのだという意思が伝わる。


「えっ?
ここで?
今?
みんな聞いてるよ」


出来得る限りの力を込めて、迷惑そうな表情を作る。けれども、大人たちは一斉に藍人くんの背中を押しだした。


「いやー、私は薬が効いたきたのかなー。
眠くなってきたなー
病院に着くまで寝てますね」
と、大川さん。


「大川さんが寝るならあたしもひと眠りしようかね」
と、華子さん。


「一番前にいるから2人の話声は全然聞こえないなー」
と、石井さん。


いや、石井さん、聞こえてるじゃないですか。だいたい、大川さんはまだしも、華子さん寝たらまずいでしょうが。


「では、遠慮なく」
と、藍人くんは大きく深呼吸を一度した。


「莉栖花さん。
じゃあ、全部最初から話ますね。
僕、口下手だから上手く説明できるか分からないけど、言葉足りないこともあると思うけど、今説明できることは全部言うので、最後まで聞いてください」


私がおずおずと横を向くと、そこには真剣な藍人くんの大きな瞳があった。



そしてここから、藍人くんの長い長い告白が始まった。