「大川さん。
浮気は、罪じゃないんですかね」
いつからなのか水の入ったグラスを手に、華子さんがドアの前に立っていた。華子さんの言葉は、大川さんの無かったことにしたかった記憶を呼び戻した。
「ああーー」
と大川さんは顔をしかめ、訊いた。
「看護師さん。
私の寿命は後、どれくらいですかね」
「そうですねー」
華子さんは錠剤を1つ大川さんの口に入れ、コップに刺さったストローを大川さんの口元に寄せた。
「私の豊富な経験から申し上げると、後3カ月は大丈夫かと」
無表情の華子さんは、食品の賞味期限でも報告するように言った。ゴクリと水を飲み込むと、大川さんののど仏は大きく上下する。そののど仏が切羽つまったように震え、大川さんの口からは究極のお願いが出てきた。
「後3カ月か……
その間は地獄だな。
その寿命、もう少し短くなりませんか?」
「それは私の管轄外なので。
そりゃあ、明日世界が終るって言うなら話は別ですけどね」
と相変わらず華子さんは、仕事以外の事には冷たい。
華子さんは私をジロリとにらむと、大川さんに聞こえよがしに言った。
「分かったかい、子リス。
つまりね、地球が滅亡しなかった時も少しは想定してかなきゃなんないってことさ。
後々、困るのは自分なんだからね」
「……はい」
浮気は、罪じゃないんですかね」
いつからなのか水の入ったグラスを手に、華子さんがドアの前に立っていた。華子さんの言葉は、大川さんの無かったことにしたかった記憶を呼び戻した。
「ああーー」
と大川さんは顔をしかめ、訊いた。
「看護師さん。
私の寿命は後、どれくらいですかね」
「そうですねー」
華子さんは錠剤を1つ大川さんの口に入れ、コップに刺さったストローを大川さんの口元に寄せた。
「私の豊富な経験から申し上げると、後3カ月は大丈夫かと」
無表情の華子さんは、食品の賞味期限でも報告するように言った。ゴクリと水を飲み込むと、大川さんののど仏は大きく上下する。そののど仏が切羽つまったように震え、大川さんの口からは究極のお願いが出てきた。
「後3カ月か……
その間は地獄だな。
その寿命、もう少し短くなりませんか?」
「それは私の管轄外なので。
そりゃあ、明日世界が終るって言うなら話は別ですけどね」
と相変わらず華子さんは、仕事以外の事には冷たい。
華子さんは私をジロリとにらむと、大川さんに聞こえよがしに言った。
「分かったかい、子リス。
つまりね、地球が滅亡しなかった時も少しは想定してかなきゃなんないってことさ。
後々、困るのは自分なんだからね」
「……はい」