その時、優しく心地よい声が私の耳元でささやいた。

『目に見える物全てが輝いて見えて、その中でも、自分が一番輝いてるって胸を張って言える時がきっと来るわ』


思いだした。桐生さやかさん。
北海道の小さな町へ向かう車中、彼女が私にたむけた魔法の言葉。


本当にそんな時がくるのだろうか。あの時は、信じられなかったけれども……
そう、もしかしたら案外近い時に……


かすかな期待が私の中に浮かびそうになった次の瞬間、私はすぐに現実に戻されカリス姫はネットの世界に帰っていった。


そんなこと考えている場合ではないと、今ある状況を思い出す。華子さんの鬼の形相(ぎょうそう)が頭に浮かび、慌てて目的地へ小走りとなった。



控え室に足を速める私は、新しい自分を持て余していた。自分の容姿について、興味を持つことさえ引け目を感じていた私の潜在意識が芽生える。


もうちょっと自信もったら……なんてポジティブが勇気づけた。
そう、リアルの自分にもうちょっとだけ自信があったら、あんなことには………



「り……すかさん?」

そう、こんな声の藍人くんとも……


「莉栖花さん……ですよね」

正面玄関近くのエントランスに差し掛かった私を、記憶から消しきれない声が呼びとめた。


へっ?
と、振り返ると、そこには……まさか……

藍人くん?!


「莉栖花さん、どうしたんですか?
その格好は………」

学生服を着た藍人くんが、目をパチクリさせて立っていた。