中年女性のバトルに割って入ったのは大川レフリー。
「車いすを押してもらうのはこっちのお嬢さんにお願いしたいね。
めでたい席なんだから、花があった方がいいだろ」
大川さんの指は私を差している。観戦サイドだった私は、意図せずリングに上げさせられ面喰った。
「えぇ?!!
私ですか?」
「そうですね。
新婦さまのベールを持つベールガールもつきますし、その方が違和感ございませんよね。
それがいいですわー。
ホーホホホホホ」
レフリーに勝利の右手を持ち上げられ、グレースーツは声を上げて笑った。今時、マンガのお嬢様でも上げないような高笑いが、部屋に響き渡った。
「でも、制服ではねー」
と私を見るグレースーツは、何か思いついたようにパンッと手に持つバインダーを叩いた。
「そうだ。
ベールガールのドレスでしたらすぐにご用意できます。
こちらのお嬢様、小柄でらっしゃいますし、大きめの子供服でしたら入るんじゃないかしら。
そう、それがよろしゅうございますわ。
では、衣装合わせをいたしますので、さっそくこちらにいらしてください」
「ええーー?!」
助け舟を出してほしくて華子さんを見たが、プライドが許さないのだろう。不機嫌な顔をしながら、アゴで『さっさと行け』と合図した。
私の戸惑いなど中年女性2人は、お構いなしだ。ある意味この2人、そっくりなのかもしれない。
ご機嫌なグレースーツに引きずられるようにして、私は部屋を後にした。