「ほお、で?
そっちのちっちゃいのは?」


私を指差す手は、必要とする脂肪もそぎ落とされている。傍観者に甘んじていた私は、大川さんと目線が合い慌ててお辞儀した。


「はじめまして。
多部 莉栖花といいます。
華子さん……吉元さんの助手です。
よろしくお願いします」


「ほぉー、助手さん付きかい。
ずいぶん立派な看護師さんなんだなー、吉元さん。
私は幸せもんだね。
こんなくたばり損(ぞこ)ないには、もったいないよ」


大川さんの個室に、ピリッと痛いような空気が流れた。


なんなんだろう。
このお祝いから、かけ離れたムードは。


無難な返しをとっくに放棄し、華子さんは棒立ちしている。当然私なんかにこのムードを和やかにできる術(すべ)などなく、華子さんと大川さんの顔を交互に見比べた。


そこへ、若い看護師が2人病室を訪れた。「着替えますから」と外に出るよう暗に指示される。

助かった……と、ホッと胸をなで下ろし、私達は廊下へ出た。