「いいの。
わたし、地元の私立大学行くから。
ボーダーフリーで名前書けば入れる大学に、先生にうまいこと言って推薦つけてもらうから」


私の将来設計をお父さんはやっと理解してくれたらしい。二本の太い腕を組むと、全てを受け入れたように大きくうなづいた。


「よし、分かった。
お前がそこまで覚悟決めてるなら、勉強のことはもう言うまい。

だがな、だったら年頃の女の子らしく、もうちょっとおしゃれするとか軽くメイクするとかはないのか?
お隣の柚貴ちゃんなんて中2だけど、お前よりずっと色っぽいぞ」


「うわー、その発言。
青少年健全育成法違反で捕まるよ」


嫌悪感を身体中からかもしだす私の態度に腹を立て、お父さんの声は自然と荒々しくなった。


「お父さんはな、親としてお前の心配をしているんだ!
大体、お前、なんだ。その格好は」


父親の反撃に対抗するには、自分を知ることも大切だろう。私は横を向き、テレビの大画面に反射して映る自分の姿をじっくりと観察した。


制服のまま寝ていたのでスカートはしわしわ。ブラウスのボタンは上ふたつ外れていて、胸元があらわになっている。けれど、自分で言うのもなんだが、色気のみじんも漂ってこない。

美容院に最後に行ったのは……あー、去年の2月?前髪伸びたなー。また、自分で切らなきゃ。

背中まで伸びた髪の毛は、幸い枝毛ひとつない健全な黒髪ストレート。


そりゃお目目ぱっちりじゃないけど、うっすーい顔だけど、これはお父さんにも責任あるんだから。