頼りにならない隊長を見捨てる訳にもいかない。極力避けたかったが緊急事態だ。

ポシェットからスマホを取り出し『ナイトの国』に助けを求めようと、クリックした。


しかし、その手を華子さんは素早くつかみ、私をにらんだ。


「ネットの仲間に捜してもらうのはやめな。
ここはね、個人の家なんだから、個人情報流すようなことは絶対しちゃだめだよ」


華子さんにしては真っ当な指導だ。でも、私だって捨て身の行動だったのに。

私は唇を突き出し、隊長に指示を仰いだ。

「じゃあ、どうします?
2人で捜したって限界ありますよ」


華子さんは再び腕組みをする。んーと考え、さして非凡な策でもないのに、さも妙案だと言わんばかりに雄たけびを上げた。


「とりあえず、人海戦術だ!
人を集めよう。
子リスも片っ端から声かけて!!」


片っ端からって言われても……


私は握っていたスマホの画面を、人差し指で次々とスクロールした。


画面の住所録にはずらりと名前だけは連なっている。でも、この事態に頼める友人がだだの一人も見つからない。『あ』から五十音順に流れていた画面が『さ』の段で止まった。


『桜庭 藍人』


この数日間、私を悩まし続ける名前。


そうだ‼

頭の中で、ピンッと音がした。


タマミさん捜索を口実に呼び出し、自然な感じで確かめなければならない設問を聞けば……


私の指は迷いなく、藍人くんのアドレスをクリックしていた。