私は合点がいった。


「なーんだ、じゃあ、あの病院詳しいわけですよね。
あっそっか。
だから、あそこの看護師さん……ほら、男の人の。
知り合いだったんですか」


「総一郎かい?
総一郎は看護学校時代からね。
同級生さ」


「へー、そんなに昔からの付き合いなんですか?
なのに、なんであんなに仲悪いんですか?」


「さあねっ。
あたしのこと、まだ恨んでるんじゃないの?
しつこいんだよね。
男のくせに」

と、華子さんは平然と言う。


私の心に引っかかったまま流れて行かなかった総一郎師長の言葉が、よみがえった。

『お前が俺の将司の命を奪ったこと、絶対に許さないからな!!』


2人の間にこびりついた因縁の深さは、計り知れない。それを思うと、もっと知りたいような……放っておきたいような複雑な気持ちになった。


上目づかいで華子さんを見つめ、恐る恐る尋ねてみる。


「恨んでるって……
もしかして、この前言ってた……
将司さんがどうのって……」


「さってと、まだ早いけど、注射の仕方、一回シュミレーションしてみよっかね。
どれ、タマミさんはどこだい?」


私の質問に答えたくないのだろうか。一方的に話を遮断し、華子さんはすっくと立ち上がった。


「タマミさーん、出といでー」


広い部屋を腰をかがめ歩く華子さんに習い、私もタマミさんを捜し始めた。


「タマミさーん。
どこにいらっしゃるんですかー。
タマミさーん」