ソファーにだらしなく体を横たえていたタマミさんは、足音もさせずどこかに姿を隠した。新参者の困惑など、我関せずなのだろう。
リビングとして仕切られていると思っていたこの部屋は、ダイニングとその奥のキッチンに、繋がっている。ダイニングと対して位置する場所には、3段だけ階段を降りると石畳のフロアがある。その壁ぎわには冬には使うのだろうか、暖炉がこちらを向いていた。
部屋の真ん中には余裕で10人は座れるソファーがコの字に配置され、中心には重厚なガラステーブル。その上では、タマミさんの必要物品が、アレンジフラワーと仲良く並んで仕事の時間を待っている。
壁一面に飾られているタマミさんの写真を見ただけでどれほどの愛情が注がれているのか、一目瞭然だ。
ぐるりと部屋の中を見回すと、高級住宅特有のきりきりとした香りで満ちた。
壁掛け時計で、時間を確認した。
インシュリン注射までは、まだ3時間以上ある。
特別する事も見当たらない。私は、庭園の眺められる窓辺に歩み寄った。
リビングの南側はほぼ全面ガラス窓で覆われ、レースのカーテン越しに日差しが差し込んでいる。レースのカーテンを顔が出るだけ開き庭を見ると、色とりどりの花が競い合うように咲き誇っていた。
その花達を取り囲むように植えられた薔薇の木は花を終え、綺麗に剪定(せんてい)されている。その奥の針葉樹の間に見える白い塀が、タマミ家と隣の家の境界線なのだろう。だとしても、一個人の家とは思えないほど広い。
手入れの行届いた庭を堪能していると、急に視神経を刺激され、反射的に目を閉じた。針葉樹の陰で、ガラスが反射したようにきらりと光ったのだ。
何かあるのかな。
しかめっ面で光の方向に目を凝らしたが、バラの葉が風に揺れただけで、そこには何も見えなかった。
リビングとして仕切られていると思っていたこの部屋は、ダイニングとその奥のキッチンに、繋がっている。ダイニングと対して位置する場所には、3段だけ階段を降りると石畳のフロアがある。その壁ぎわには冬には使うのだろうか、暖炉がこちらを向いていた。
部屋の真ん中には余裕で10人は座れるソファーがコの字に配置され、中心には重厚なガラステーブル。その上では、タマミさんの必要物品が、アレンジフラワーと仲良く並んで仕事の時間を待っている。
壁一面に飾られているタマミさんの写真を見ただけでどれほどの愛情が注がれているのか、一目瞭然だ。
ぐるりと部屋の中を見回すと、高級住宅特有のきりきりとした香りで満ちた。
壁掛け時計で、時間を確認した。
インシュリン注射までは、まだ3時間以上ある。
特別する事も見当たらない。私は、庭園の眺められる窓辺に歩み寄った。
リビングの南側はほぼ全面ガラス窓で覆われ、レースのカーテン越しに日差しが差し込んでいる。レースのカーテンを顔が出るだけ開き庭を見ると、色とりどりの花が競い合うように咲き誇っていた。
その花達を取り囲むように植えられた薔薇の木は花を終え、綺麗に剪定(せんてい)されている。その奥の針葉樹の間に見える白い塀が、タマミ家と隣の家の境界線なのだろう。だとしても、一個人の家とは思えないほど広い。
手入れの行届いた庭を堪能していると、急に視神経を刺激され、反射的に目を閉じた。針葉樹の陰で、ガラスが反射したようにきらりと光ったのだ。
何かあるのかな。
しかめっ面で光の方向に目を凝らしたが、バラの葉が風に揺れただけで、そこには何も見えなかった。