横断歩道を渡り、住宅街の路地に入る。
女子高生達の姿が見なくなったのを確認し、私は人のいない児童公園の前でしゃがみこんだ。


「あぁ……
やっちゃたー」


両手で頭を抱えた。全身から反省が沸き上がる。即座に、やってしまった行動を取り返す方法を考えた。


謝った方がいいかと立ち上がり来た道を数歩戻ったが、一部始終を見ていた太陽が『時すでに遅し』と嘲笑(あざわら)っている。


「だよねー。
遅いよねー。
なんてバカなことしちゃったんだろう」


私が2年半近くで築き上げた地位(?)、地味で大人しくなんの害も利もないというポジションが一瞬にして崩れ去った。息を殺し、意識的に存在感を消していた努力が水の泡となる。


「もう、おしまいだ」


何が終わってしまうのかは分からない。


ただ、今の私の行動は数時間後には学年中に知れ渡り、高評価につながるわけではないのは確実だ。新学期からの学校生活は、今以上に居場所を見つけずらくなるだろう。


元をただせば、藍人くんのせいだ。八つ当たりだと言ってしまえばそれまでだが、そう思わないとやっていられない。


明日には絶対直接対決し、はっきりさせよう。このままでは『ナイトの国』にも行けやしない。


スマホをカバンから取り出し、時間を確認した。


待ち合わせには、余裕がある。けれども、何かから逃げたいのか、体がうずうずする。自然と駆け足となり、私は目的地へ急いだ。