「違うよ。
違うの。
ホント、彼氏じゃないから」


必死で否定したが、同級生は軽く受け流す手段で探りを入れてきた。


「もう、隠さなくってもいいじゃない。
すごいよね、1年生なんて。
マジ、やるね。
今度紹介してよ。
ねぇー」


意味ありげに目配せし笑い合う2人の女子高生。


精神状態が壊滅寸前だった私は、頭の中でプッツンと何かが切れる音を聞いた。


「本当の事、何にも知らないくせに……」


「ええっ?」


虫の羽音のような声を、女子高生は聞き返した。うつむく私にその表情は見えないが、声から苛立ちが伝わる。


そんな彼女たちに、感情をぶつけずにいられない。私はかみしめるように、繰り返した。


「何にも知らないくせに……」


目線を落としていた私は顔を上げキッとにらみを効かせると、私の中で渦巻く怒りをぶつけた。


「勝手な憶測で話しないでよ!
私の知らない所で好き勝手に噂して、話作って。
ある事、ない事でっち上げて話してればいいじゃない。
さぞかし面白いでしょうよ。

私はね、みんなのラインの話題作りしてるわけじゃないのよ!!」


声を荒げる私を、2人は茫然と見ていた。


下唇を色が変わるほどかみしめ、挑(イド)むように2人をにらんだ。彼女たちは応戦を放棄し、戸惑いと哀れみの表情で私の上に立つ。


しばしの沈黙後、私はくるっと向きを変えると何も言わずスタスタと歩きだした。