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無言で家を出る反抗期の娘に、お母さんは優しく「いってらっしゃい」と声をかけた。
外出するのは、夏祭りの夜以来。
とぼとぼと歩いていると、中古車屋のショーウィンドウに映る姿が私の視野をかすめた。二度見すると、それは私自身。背中を丸めて立つ私は、華子さんそっくりだ。いかんいかんと反省し、せめて胸だけは張ろうと背筋を伸ばした。
姿勢を正していると、そのガラスに2人の女性が音も無く現れた。
「あっれーー、莉栖花ー?
元気ー?」
背後からの声に気づかない振りをするか迷ったが、無視もできまい。恐る恐る振り返った。
立っていたのは夏の日差しに負けないほどのキラキラ輝く笑顔。そのまぶしさにげんなりした。
1人は高校1年生の時のクラスメイト。
もう1人は同じクラスになったことはないし、もちろん話をしたことすもないが記憶の片隅に同級生だと認識させるカケラがある。
「あ…ああ……
元気……」
視線を下にむけながら、全力で愛想笑いした。
「ねえ、莉栖花。
聞いたよ、ちひろ達から。
莉栖花、1年生とつきあってるんだって?
なんか、すんごい可愛い子だっていうじゃない。
どこで知り合ったのよ」
元クラスメイトはまだしも、同級生だとぎりぎり認識できる女子まで、事情を知っているかのように、ニヤニヤと笑っている。私の情報は彼女たちのツイッターで、急上昇ワードになっていたらしい。