夏祭りから5日がすぎた。
寝起きの私は、むすっとした顔でダイニングテーブルについていた。そのテーブルには白身だけのハムエッグと食べかけのトースト、それに一口分だけ残った牛乳がある。
テレビはお盆休みの渋滞情報を報道していたが、そんな箸にも棒にもかからないような話題にまでイラつく。
「渋滞なんて今に始まったことじゃないんだから、わざわざ公共の電波使って報道しなくてもいいじゃん」
パジャマ姿でテレビに悪態を付くやさぐれた娘を、母は台所から遠巻きに見ているようだ。冷蔵庫から麦茶を取り出す父親へ尋ねる声色で、心配しているのが伝わる。
「ねえ、お父さん。
莉栖花、なんかあったの?
夏祭りの後からずっと機嫌悪いんだけど。
そりゃあね、夜更かししてないみたいだし、今日だって起こされてもいないのにちゃんと起きてきたし、健康的っちゃあ健康的なんだけど」
「いや、母さん。
そっとしておいた方がいい。
莉栖花は今、大きな問題を抱えてるみたいだからな」
「お父さん、何か知っているの?
じゃあ、ちゃんと莉栖花に確かめてよ」
「いやー、それはちょっと怖くてできないなー」
声をひそめているつもりらしいが夫婦の会話、全部聞こえてますから。
知らん顔で、目の前にある食品と認識できるものを、嗜好(しこう)とは無関係に胃袋へ流し込んだ。