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「はあ、やっと終わった。
最後の最後に大事件おきたね。
いやー、マイッタ、マイッタ。
まっ、終わりよければ全てよしってね」
後かたずけを全て終え、来た時と同じ状態になった救護室で、華子さんは大きく背伸びした。とってつけたようなセリフでハッピーエンドに片づけたつもりの華子さんを、私は睨んだ。
「何が終わりよければ全てよしですか。
わたしは誤魔化されませんよ。
さっきはいったいどこ行ってたんですか?
だいたいおかしいじゃないですか。
トイレならすぐ隣の化粧室使えばよかったでしょ。
なんで、わざわざそんな遠くまで行ってたんですか?」
「あー、トイレねー。
ここのトイレ狭いから嫌なんだよね。
あっちのおっきなトイレでゆっくりしたかったっていうかー」
とぼける華子さんに、私は声を荒げる。
「トイレの大きさなんてどうでもいいじゃないですか。
だいたいこんなおっきなカバン持っていかなくっても」
テーブルに置かれた華子さんのカバンをつかもうとすると、華子さんは泡を食ってひったくった。
「ちょっと、触んないでよ!」
思いっきり引っ張ったその勢いで、ファスナーを閉め忘れていたカバンの中身が床に散乱した。カバンから飛び出た物は……コンサートの主役の名前が入ったタオル、顔写真がプリントされたうちわ、Tシャツ……