「華子さんは?
今どこにいるのよ!!」
私は不安で、今にも泣きそうな声になる。
「ちょっと奥の方のトイレに来てて。
後、10……ううん、8分で戻るから。
とにかく、
とにかく、落ちついてね」
電話は無情にも切れた。時間はない。なんにしても、私がしっかりしなくっちゃ。
涙の浮かんだまぶたを手でぬぐい、友達をキッと見た。
「お友達!!
この子のカバンからエピ……エピペンって、こうちっちゃいスティックみたいなものがあるか探して!
急いで‼」
オロオロとうろたえていた友達は、言われるがまま友達のトートバックをひっくり返した。床には口紅やハンドミラー、ボールペン、財布などが散乱する。友達は床を這(は)い、一つ一つ手にとっては探し物で無いと放った。
私はますます呼吸が荒くなる女の子を華子さんの指示した体制にし、すぐさまポケットからエピペンを探した。けれども、探し物はポケットからもカバンからも出てこない。
「真由香ーー、真由香ーー
しっかりしてーーー」
エピペンを探すのを諦めたお友達はベットに寄り添い、真由香ちゃんの腕を擦(さす)って泣きじゃくっている。
正直、私だって不安で『どうしたらいいのー』と叫びたい気持ちだった。でも、うろたえたらこの子の不安が増すだけと、下唇をかんで我慢した。
私の目に、テーブルの上に置き去りにされたスマホが映る。
どこにもぶつけられない気持ちを『ナイトの国』にぶちまけたい。誰かに弱音を吐きたい。
私は、スマホを手にした。
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カリス
<救護室に
アレルギーの子が運ばれてきた
エピペンみつからない
どうしたらいいの?
>カリス姫が困ってる
助けよう
>拡散しろ
>アナフィラキシーか?
対処急げ
>これ エピペンの画像と使い方の動画
貼りつけとく
>ドームにいる友人につなげろ
>ファンクラブのツイッターにリプ送れ
>カリス姫 オレがついてる
ナイト
>カリス姫
落ち着いて
自分がその子だったらどうするか考えてごらん
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