立っていたのは、真っ青な顔をした女子高生。
もちろん知らない人。
そして、もう1人。
その女子高生が両脇を抱え、引きずられるようにして連れてこられた女の子。
目の周りと唇が真っ赤に腫れあがり、呼吸も途切れ途切れ。引きずられているというのに、なんの反応もない。
「真由香が……友達が……
今、ごはん食べてて……
えっとー、そしたら急に……
あの……」
顔色を失った女の子は、整理できない言葉をかき集めて必死に説明した。
医学の知識が皆無の私にも、この異常事態は分かる。落ちつけ、落ちつけと自分に言い聞かせた。
「とりあえず、ベットに!」
と言い、私は意識の無い女の子の足を抱えた。
2人で抱きかかえると、女の子は思ったより重い。意識が無いからだろうか。そのずっしりとした感触が今与えられている私の責任の重さと、重なった。
女の子をベットに寝かせると、すぐさま固定電話に駆け寄る。受話器を手に取り短縮1番に指を置いた。手が震え、上手に押せない自分にいら立つ。
コール2回で、華子さんは出た。
「華子さん!!
早く、戻って来て!!
女の子……女の子が友達に引きずられて来たの。
目の周りとか口とか腫れて。
でね、呼吸もおかしいのよ。
声掛けても返事しないし」
「目の周りが腫れてる⁈
ねっ、その子、今何してたの?」
華子さんはどこにいるのか、受話器の向こう側からの騒音で話が聞き取りずらい。私はお友達に確認しながら、華子さんに説明した。
「今?
なんか食べてたんだよね。
うどん?
うどん食べてたの?」
「うどん⁈
その子、なんかアレルギーない?」
と、華子さんは早口で訊いた。
ベットの横に跪(ヒザマズ)き、友達の顔を心配そうに見ている友達に尋ねる。
「そば?
そばアレルギーがあるって」
「そっか、そばとうどん、同じ鍋で茹でてたのかも。
ヤバいな……。
子リス、いいかい。落ちついて。
その子の枕、外して、顔横に向けて。
吐くかもしれないからね。
そのベット足も上がるからリモコンで足の方上げるんだよ。
2.30センチ位でいいから。
それから、お友達にその子、エピペンって10センチ位のスティック持ってないか探してもらって。
いいかい、子リス。
落ちつくんだよ」
華子さんが『落ちついて』を繰り返すほどに、緊急事態であることを実感した。