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カリス
<タイフーンのライブ会場NAU

>カリス姫ドームいるの?

>カリス姫 
 新しい動画みたよ
 すんごいよかった

>えーーチケット取れたの?
 マジすごい

カリス
<ううん バイト
悪魔ナースの華子さんと
 救護室で留守番
 でも もう終わり
 もうすぐ帰る

>カリス姫 バイト乙
 ここに前ほど顔ださないね
 なんかあった?

>悪魔ナース 華子ていうのか
ワロタ

>カリス姫 リアルで何かあった?
 マジ ショック

>華子って吉本興業wwww

>それは花子www

カリス
<何にもないよ
 バイトや動画作るの忙しかっただけ
 また 来るよ

>リアルでの話はやめようぜ
 生々しい
 幻滅する
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そうだよねと独り言をつぶやき、Tシャツ越しに巾着袋をギュっと握った。


綿紐をつけた、手のひらほどの大きさの巾着袋。首からかけられた巾着袋の中には、藍人くんから貰った用紙が小さく折りたたんで入っている。


家に置いておくと誰かに見られるか間違って捨てられそうで、それでも、スマホに打ち込む勇気もでず、こうしてTシャツの中に隠し持ち歩いていた。


勇気の出ない理由は分かっている。結局は自分に自信がないんだ。


藍人くんにどんなに優しい言葉を掛けられても、心の隅にいるネガティブが溶けて消えるものかと頑張っている。


そりゃ、そんなに簡単にいなくなるはずがない。何年間もこいつの天下だったのだから。きっと自分で溶かさなければ消えない、誰かが消してはくれないんだ。

とは分かっているが、その方法が見つからない。


結局はリアルと切り離しておしゃべりできる『ナイトの国』の居心地の良さに、逃げてしまう。


『リアルの話はやめようよ』とログを打ち掛けた時、会場側の扉がノックもなしに開いた。


「あれー、華子さん。
案外早かっ……」


華子さんが帰って来たとばっかり思い、顔を上げた私は、扉の奥から現れた人物を見て、血の気が引いた。