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コンサート終了のアナウンスが救護室にも響いた。


結局、華子さんの言うとおり、こちらの救護室には転んで膝をすりむいた中学生と、様子を見に来たドームの職員しか訪れなかった。


物足りないくらいのバイト終了を間近にし、華子さんの様子が急変した。さっきまでガバガバとお茶を飲み、マンガ本を読んでケタケタ笑っていた華子さんが、お腹を押さえて苦しみだしたのだ。


「お……お腹……痛い……」


「大丈夫?
華子さん」


華子さんの肩に手を置き、苦痛にゆがむ顔をのぞきこんだ。


「うっ……うん……
本当はね、ここ来た時からお腹痛かったんだけど、ずっとガマンしてたのよ」


とてもそうは見えなかった。私に心配をかけまいと気を使ったのだろうか。


「コンサートも終わって、もう来る人もいないだろうから……
あっ……あたし、ちょっと……トイレ行ってくるね……
長く…なるかもしれないけど……」

と、かすれた声を絞り出す。


「はい、いいですよ。
わたし、留守番してますね」


華子さんの立てた人差し指は、隅にある電話に向けたまま震えていた。


「もし……誰か来たら、あの固定電話の短縮1押して。
私の……携帯、繋がるようになってるから」

と、華子さんの声はあくまで弱々しい。息も途切れ途切れだ。

鬼のかく乱とでもいうのかな。さすがの私も心配になる。


「ああ、はい、分かりました
ここは、任せてください。」


胸を張る私をちらっと横目で見ると、華子さんは背中を更に丸めお腹を押さえながら出て行った。なぜだか、いつものでっかいカバンを肩にかけて。


華子さんがドアを開けると、興奮まだ冷めやらない若い女性達の騒音がとどろいた。


たった扉1枚なのに、この温度差はなんだろう。学校でもよく味わう疎外感に耐えられず、私はスマホで仲間に呼びかけた。


平日の夜だが、『ナイトの国』には30人以上が集まっている。