「お嬢っ……」
悲痛な声とともに顔を上げ、痣のある口元は微かに震えている。
そこには、今までの飄々とした先生はいなく、組の者の顔をしていた。
「先生、その約束はもう忘れてください。先生はもう、組の者ではないんですから」
組自体がなければ、組の者でもない。
先生はまた黙ってうつむき、拳を握り締めた。
「……お嬢は、このことを修人らに言ったんですか?」
もう一度顔を上げた時に言われたのは、それだった。