「だからってあなたが気に病む必要はありません。俺が弱かった。ただそれだけですから」
何かを諦めるみたいに、“勝てない”と言う先生。
私が異常なだけなのに。
「ああ、そこ座ってください」
先ほどまで蒼が回転していた椅子に座るようにいわれ、初めて気付く。
そういえば、立ったまま。
勧められた椅子に、腰を下ろす。
「篠原さん…いや、“お嬢”」
懐かしく、聞き馴れた呼び方。
それに対し、椅子から立ち上がるとかはしない。
ただ、思考があの光景を蘇らそうとする。