倖は、「もう少ししたら来ます」と律儀に言って出て行った。
その後に修人が続けて出て行く。
その表情はいつもの無表情に近いものになっていたが、こちらに視線を一度やると、「また来る」と呟いた。
修人たちの出て行った保健室の中は、一瞬沈黙が支配した。
でもすぐに先生が、傷跡の残る顔でにっこりと笑うと、柔らかく言った。
「ね?俺じゃ手も足も出ない」
その言葉のせいで、先生の笑顔がひどく自嘲しているかのように見えた。