いいえ、と先生までもが素直に答える。
「先生、私に何を求めているんですか?」
「何もって言ったら嘘になりますね」
私は疑うような視線を向ける。
「…“約束”なんですよ。あなたの両親との」
「は?」
予想外の答え。
自分で質問したくせに、しなきゃよかったと今更後悔しても遅い。
しっかりと聞いてしまったそれは、もう、なんというか、手遅れ。
「…喋んないで、黙って、消えて、死んで、いなくなって」
自分の声のはずなのに、ひどく遠く聞こえる。
先生の声はあんなにも鮮明に耳に入ってきたのに。