綺麗だな…

右隣から呟く声が聞こえた。

あたしは、うん、と返す。

家で見る花火の何倍も綺麗だ。

カキ氷を頬張りながら眺める。

何度も夜空に大きな花が咲き、

体に染み渡る音が響く。



「なぁ、有村…」

不意に名前を呼ばれた。

何?と言葉を返すと、



「俺さ、お前が好きだ」



となんの前触れもなく言った。

突然思い出したかのような、

そんな口調で。

あたしたちの周りだけ、

時間が止まったような気がした。

「…え?なんて?」

花火の音がやけにうるさい。

屋台の明るいオレンジ色が、

あたしたちの頬を柔らかく照らす。

「俺、有村の事が好きだ」

あたしの聞き間違いではなくて、

ただ真っ直ぐ、

彼は確かに、

「好きだ」

そう言った。