え、と声が漏れる。

「いや、大人っぽいから…
似合うなーって思って」

少し俯きながら話す吉谷君。

「あ、…ありがと」

思わずお礼を言ってしまった。

じゃ、行こうか

そんな言葉で歩き出す。

長い足をゆっくりゆっくり踏み出し、

少しあたしの右前を歩く。

あ、合わせてくれてるのかな…

そんな嬉しい想像を勝手にする。

「そういえばさー」

ん?と聞き返すと、

この夏休みの話をたくさんしてくれた。

バスケでレギュラーになりそうなこと、

宿題があと少しで終わること、

単身赴任のお父さんが帰ってくること、

いつの間にかあたしの右横にいて、

笑いながら、そんな話をしてくれた。

あたしもたくさん笑った。

一緒に笑いあえることが、

こんなにも嬉しいことだったなんて、

気づかなかった。


「あ、もう着くな」

お祭りは既に賑わっていた。