「あ、そうそう」

吉谷君は不意と振り返る。

目線が絡まって、少し恥ずかしい。

ん、と差し出した手には、

ストレートティーのペットボトル。

あ、あたしの好きなやつ。

「有村、好きそうだろ?
こういう大人っぽい飲み物」

「よくわかったね、好きだよ」

「お、当たった‼︎
じゃ、はい。あげる」

「え、でも…頼んでないよ?悪いよ」

「いいって、俺飲めねぇし‼︎
俺はこれ‼︎夏は炭酸に限る‼︎」

「年中、炭酸でしょ?」

「あ、バレた?」

とニコッと笑う姿がかわいくて。

お金を返そうとしたら、いらないと頑固拒否して。

思わずもらってしまった。

吉谷君が買ってくれた、ストレートティー

なんとなくいつもより違った。

いつもより、2倍くらい、

美味しく感じた。


「…有村さ、

浴衣、似合うな」


唐突に、なんの前触れもなく、

吉谷君から言葉が放たれた。