なんとも言えない時間が流れた。

「…利奈は浴衣?」

凪が沈黙を破った。

「まだ決めてないの。
一応押し入れからは出してきたよ」

「浴衣がいいよ‼︎
利奈、顔が綺麗だから、
浴衣とか絶対似合うよ‼︎」

「そうかな…
あ、凪はメイクする?」

「軽くしようとは思うよ?
あんま派手にすると、引かれるし。
そういう派手目、好きじゃないと思う」

じゃあ、あたしもアイメイクだけにしよう、と思った。

浴衣、か…。

中学2年生。

まだ、病気を知らなかった時。

お母さんがあたしに似合うと言って、

黒ベースの紫の蝶々が舞う浴衣を買ってくれた。

でも、

まだ、1度も袖を通していない。

着れなくなった。

お祭りに行けなくなった。

でも、今年は…

着てみよう。

そう、ふと思った。