「いや、あたし…

あたし、色つけるの下手だからっ…」


そう、答えるのが精一杯だった。

ふーん?と納得したような口調で、

もう一度スケッチに目を落とした。

「でもよー、こんな綺麗な絵なんだから
色塗んないともったいなくね?」

「…そんなこと、ないよー」

「俺は好きだぜ、この絵」

なんともいえない感情が、

思いが、気持ちが、

あたしを巡った。

あたしの絵を好きだと、

確かに、そう言ってくれた。

「うん、……ありがと」

そう答えると、彼は立ち上がった。

行くわ、バイバイ

そんなありきたりの言葉を残して、

あたしの前からいなくなった。


どうしてだろう、

色をつけたくなった。

綺麗な、絵にしたくなった。



でもーー

でも、

あたしには、できない。


この絵に、色をつけることは。


できないーー