ーー放課後。
あたしは教室で絵を描いている。
雨が続いた最近だけど、
今日はなぜか晴れている。
あたしは自分の席に座り、
体を後ろに向ける。
丁度、吉谷君の席が見えて、
ふと、描こうと思った。
鉛筆を握る。
緊張して、少し手が震えてる。
それでも、描く意志だけはある。
だからこうして、
震える手でも、
しっかりとスケッチされてる。
数十分後、
作品が完成した。
「うわっ‼︎すげーな‼︎」
思いもよらないところから声がした。
はっと振り返ると、笑ってる吉谷君。
「え、なんでここに…?」
「ん?忘れ物‼︎」
そう言って、自分の席に向かった。
あった、と言ってノートを取り出した。
「お前、美術部だよな?
絵、見してよ?」
いつもの柔らかい口調と、
優しい瞳が、
あたしに向けられて、
断ることなんかできなかった。
「うまっ‼︎これはあそこだろ?
あのグラウンドのバックネットの…
で、これは…あれだ、階段のさ…」
嬉しそうに、感心しながら話してくれる吉谷君。
「でもよ、なんで…
なんで、色塗ってないん?」
吉谷君の言葉が、
あたしの心を突き抜けた。