天霧総合病院の屋上から飛び降りたら、近くに警察署もあるし、移動する時間も凝縮されて楽に遺体を片付けてくれるかな……って思ったんだっけ。今思うと、本当にバカな考えだけど。

 でも、飛び降り自殺を決行しようとしたあの日に――春人がいた。

 毎日毎日、バカの1つ覚えみたいにそこにいる春人に、最初は苛立って……早く去ってほしくて、適当に協力してバイバイするつもりでいたんだけど……だんだんと春人と話すのが楽しくなっていった。

 でも、1度染まり出した胸の内の闇は、そう簡単には消えてくれなくて、どんどん苦しくなっていて……病院で薬を大量に盗んだんだ、死ぬために。

 みんなは私が犯人だって分かっているのに、何も言ってこないのは……もしかして、記憶を戻らせないようにしてくれた、のかな。

 それで……自分が死ぬ前に、最期に春人のためにと高校に乗り込んで、あんな横暴な行動をしちゃったんだっけ。

 春人の男の同級生には、暴力を振るっちゃって酷いことをしちゃったな……。

 アレは昔に少しだけ空手をやっていて、それを活かした……いや、利用した、の方が言い方としては正しいのかな……。

 病院の屋上にはまた春人がいるだろうって思った私は、家で薬を大量に摂取し……多分、気を失っているところを両親に発見されて、病院に搬送されたんだろうな。