「はぁ……はぁ……」


 桃花さんは頭を抱えたまま、大きく肩を上下に揺らすようにして息をする。

 僕はこの後、どうなってしまうのかが怖くて、ハッキリと桃花さんの姿を見れなくて、横目に見た。


「……桃花ちゃん?」

「……桃花……さん?」


 情けない声で、呼ぶ。

 心臓が張り裂けそうなくらいに痛くて、痛くて……痛く、て……。

 口の中が、カラカラになる。


「桃花ちゃん、思い出してくれた……?」


 横目に見る榊くんは、期待をあらわにしたような……ワクワクとした面持ちで、桃花さんに問い掛けた。

 桃花さんは何も言わないまま、頭を抱えていた両手をぶらんと垂らす。

 そして、ゆっくりと顔を上げて榊くんの方を見ると、にっこりと微笑み、両手をあげながら榊くんの方へと駆け寄っていく。


「榊先輩!大好きですっ」


 ――っ!!!


 桃花さんの放った言葉が信じられなくて、思わず目を見開く。

 胸が痛くて、涙もぼろぼろと溢れ出て、頭の中が真っ白になっていく。

 ああ……やっぱり。
 僕が思っていた通りだ。

 こうなってほしくないと願っていても、やっぱり最終的にはこうなってしまう運命だったんだ。

 こうなってしまうのは分かっていたはずなのに、ちょっとでも期待を抱いたりして……本当に僕は大馬鹿者だなぁ……はは。