……もしかしたら、榊先輩は誰かの愛し方が分からないのかもしれない。そして、みんなに愛されたかったのかもしれない。

　昔に何があったのかは分からないけど、榊先輩をここまで歪ませた何かがあったんだろう。

　愛されたい。この強い思いが、今回の引き金になったんだろう。

　だからといって、女の子たちを次々と捨てていいわけではないけどさ。


「……榊先輩」


　私が呼んだ瞬間、榊先輩は再び両目をくわっと見開き、ものすごいスピードで私の首を絞めてきた。


「？！」


　ぎりぎり、ぎりぎりと、自分の首から締め付けられる音がする。

　息が出来なくて、苦しくて、ただ口を動かすことしか出来ない私に、榊先輩は怒鳴り散らすように言う。


「俺は君のことをアイしています。俺は君のことをアイしています。俺は君のことをアイしています」


　壊れたロボットのように、何度もその言葉を繰り返す。

　それは私に訴えているかのようでもあったけど、自分自身に言い聞かせているようにも聴こえた。


「アイしています。アイしている……なのに、どうして、君は俺のモノに、ならない？君は、俺のモノ。俺のモノ、なのに。なのに。なのに。どうして。アイしている。なのに、だから、俺のモノに、俺の、モノに」


　自分はこんなにも想っているのに、私がそれを受け入れないから、頭の中で自分の気持ちをどう処理したらいいのか分からないんだろうな。

　意識が遠退いていく中、私は冷静にそんなことを考えていた。