僕の母親が死んだ。本当に突然の死だった。……死因は、事故死。

　建設中のビルの上の方の階から、ロープが脆かったのかは知らないが、プツンッと切れて束ねていた鉄柱が落ちてきたんだ。

　それの下敷きになった母親は、叫び声もあげる間もなく死んだ。即死だった。

　大切なモノの死を目の前に、僕はそこで初めて色々と考えてみた。

　クラスのみんなが僕をイジメる理由は何か？――僕のことが単純に嫌いだから。

　夢も何もない僕がこのまま生きていて、何か意味はあるのか？――ない。何も考えていないただのクズ。

　だれからも必要とされていない僕はどうしたらいいのか。――そうだ、死のう。死ねばいい。

　みんなから嫌われて、生きていてもなんの役にも立たない僕なんて、今すぐにでも死んでしまえばいい。

　どうしてはやく気が付かなかったのだろう？僕なんて死ねばよかったんだ。なんだ、案外簡単に答えが見付かって安心した。

　よし、死のう。

　今すぐに死のう。



　――みんなのために、死のう。



　当時高校３年生の僕は、父親の職場である病院の屋上へとやってきた。

　僕が死んだらみんなは喜んでくれる。それなら、もっとも人がいて、人目のつくところがいい。

　……だから父親の職場を選んだんだっけ、当時の僕は。