遠くの方では車の音や人の声がかすかに聞こえる。
結局あの後は水族館には入らなかった。
人気のあまりない近くの公園のベンチに座り、あたしが落ち着くようにしてくれたのだ。
「あたしね」
あたしは決心して一言ずつゆっくり話すことにした。
山下くんは決してあたしを急かすことなく、何も言わずに頷いてくれる。
「中学のとき、すごく…本当にすんごく好きな人いたんだ」
山下くんはそれを聞いてただ『知ってたよ』と言う。
あたしが驚いて目を丸くすると、彼は『前に告られてるところ見た時に聞いた』と言う。
そして『続けて』と。
あたしは深呼吸をして話を続ける。
「けど、卒業式前日に思いっ切り振られちゃった」
思い出すと胸がぎゅっと締め付けられる。
「たった二言『ごめん、無理』って」