『次は終点……水族館前』


バスのアナウンスにはっと目覚める。


どうやら少し寝てしまったようだ。


隣の山下君は、財布のなかの小銭を漁っている。


だんだん近づいてくる水族館らしき建物をぼんやりと見つめる。


「降りるよ〜?」


そんなあたしに優しく彼は言う。


先に立ち上がった彼はあたしに手を差し伸べ、手を引く。


二人分です、と運賃を払い終えるとバスを降りる。


いつの間にか雨はやんで、ぼんやりとした曇り模様。


まるであたしの心のように。