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「いるなら教えてよね!!」
笑顔で近づいてくる明美。
「うん。けどいないから」
あたしは必死に笑顔を作って答える。
そんなあたしに聞こえてきたのは、今まで聞いたことのない千夏の声。
「…じゃぁ、もういい」
「え?」
あたしは千夏のほうを見つめる。
「うちらが信用できないんでしょ?」
千夏が冷たい視線をあたしに向ける。
「…そんなんじゃないよ」
あたしは首を振る。
「じゃぁ何で?」
千夏が口調を強めて言う。
「何を隠してるの?」
明美が追い打ちを掛けるように問う。
あたしは何も言えなくて。
ただただうつむくだけ。
「ま、皆……」
静香が何か言おうとしたのと同時に千夏が言う。
「いいよ、もう」
そしてあたしに背を向けて歩き出す。
「行くよ、静香」
戸惑う静香の手を引いて、明美が千夏の後を追う。
あたしは去って行く3人の姿をただ見つめるしか出来なかった。
言えないよ、皆には。
言えるわけないんだよ、千夏には。