「時間は5分間、2年対1年のミニゲーム始めます。礼!」
「「しゃっす」」
体育館に低く揃った声が響き渡る。
「遥マークOK!」
「凌も!」
キャプテンと副キャプテンらしき人が2人のマークにつく。
「おい夕那!遥より点決めっから数えてろ」
2年生の中で抜きんでて背の大きい凌の声がする。
「ダメ!ゆうはオレだけ見てて!彼女なんだからっ」
一際小さな遥からの声も聞こえる。
「うっせーぞ試合始まってんだよ!気ぃ抜いてると2人とも交代するぞ」
凌につくキャプテンからの叱咤を合図にボールがジャンパーの上へ上げられる。
「ティップオフ!」
最初はおされ気味だった2年チームも、凌の連続ポイントを機に、シュート率も上がってきている。
都大会に出るチームとあって3年生に負けず劣らずプレーしている。
その中でも一際目立つのがダブルエースの凌と遥だ。
PGの遥を起点としたチームは上手くまとまっていた。
「...また上手くなったな」
幼い頃から見てきている凌の成長は止まる事を知らない。
SFとしてインサイドに切り込んでいく姿は昔から変わらないが、その成長スピードは秀でるものがあった。
「アウトオブバウンズ!白!」
体育館の隅に転がっていくボールを拾おうとする。
「先輩抜くから、見てて」
ボールを拾い走り去る後姿は紛れもなく遥だった。
「っ、だから反則だってば」
Tシャツから見える筋肉も、汗で濡れた髪も、少し息の上がったその声も。
凌の一言はいつも突然で、私の返事なんか聞かないで。
「撮りたい」
撮りたい、そう思った。
コートを縦横無尽に走り回るあなたを、楽しそうに笑うあなたを、
夢を叶えようと必死になるあなたを、
全部、全部、撮ってみたいと思った。