凌と体育館で分かれた後、私は写真部の部室へ向かう。
「夕那ちん!遅かったね」
一番に声をかけてくれたのは3年生の湯崎リサ先輩。
「体育館に荷物運んできたんで!」
荷物扱いされているとは知らずに今頃遥と1 on 1でもやっているだろう幼馴染を思い浮かべる。
「ああ凌君ね、本当仲良いね君ら」
少し呆れながらも先輩は笑って言葉を返す。
「腐れ縁ってやつですね!そういえば皆は?」
周りを見れば私とリサ先輩の2人以外いないのに気づく。
「ああ、コンテストの応募用紙出しに行ったよ」
8月の半ばにある、高校生写真甲子園に我が学校は応募をする。
1年生2人、2年生1人、3年生5人という少ない人数の中、なかなかの賞を受賞出来ているのも、凌の父であり、プロカメラマンの清水賢三が外部顧問として教えてくれているからであろう。
「もうそんな時期か!私も行って来ます」
「いってらっしゃーい!」
応募用紙とカメラを持ち、部室を後にする。
部室棟を抜け、体育館の前を通ると汗だくになりながら必死にボールを追うバスケ部を見つける。
「さっすがダブルエース」
遥と凌は言われるだけあって、2年生の中でも群を抜いて上手かった。
「カッコいいじゃん、遥」
聞こえていたのか、レイアップを決めた遥がこちらを向く。
「センパーイ!あれオレの彼女っすよ!」
得意げな顔で私を彼女と紹介する姿に顔が赤くなる。
「ゆう!今からミニゲームするから見てて!」
易々とハンドリングをしながらこちらに向かって大声で叫ぶ。
「勝手にミニゲームとか決めてんじゃねえよ!」
キレぎみの先輩からタックルをくらう姿に自然に笑みがこぼれた。
「ふっ、アーホ。てかあんなおっきな声で彼女とか言うなし。」
バスケをする遥を見たいと思った。
そしてこの小さな一眼に収めてみたいとも思った。
「くっそ、先輩を差し置いて可愛い彼女作りやがって。
2年対3年でミニゲームするぞ、一年審判な」
文句を言いながらもミニゲームを了承してくれるキャプテンを見て、凌は本当に愛されていると思った。