赤い絨毯の敷かれた長い廊下を一人、足音を立てぬように歩く。


しとしと、と降る雨と生ぬるいこちらを隔てる窓に、冴えない顔が映っていた。


ふっ、と息を漏らせば、窓に小さな白い曇りが生まれる。



「春野さん、大旦那様とのお話は終わったの?」


窓に、自分以外の顔が浮かび、その影にはい、とだけ答える。



「なら、大介様のお部屋に行って頂戴。大介様、貴方の事探していらしたから」


美人な先輩、邦崎さんの指示は絶対だ。