帰り道を歩きながら、双葉の事が気がかりだった。

いきなり目の前に現れて、馴れ馴れしくしてきた彼女。

…馴れ馴れしいというのは少し違うかもしれない。

例えるならアレは、そう…十年来の友達のような…いや、恋人同士のような…。

そこまで考えて、俺は頭を振る。

いやいや、待て待て。

どんなに親しげに接してきたとしても、どんなに俺の事を慕ってくれたとしても、俺は双葉と初対面なんだ。

ましてや、ファーストキスの相手だなんて…。

自分の記憶と、双葉の自信ありげな態度の狭間で、頭の中が混乱してマーブル模様を描く。

…本当はそうなのか?

双葉の言ってる事が正しくて、俺が忘れているだけなのか?

あいつの言う通り、俺は去年双葉と会っていて、彼女とキスを…。

自分でも分かるくらい顔が赤くなっている事に気づいて、俺は頭の中を切り替える事にした。