「あの…有難うございます、へきるの面倒を見て下さったそうで…」

丁寧に頭を下げてくれる母親。

…それよりも、俺は気になる事があった。

さっきから母親が呼んでいる女の子の名前。

へきる。

確か双葉の下の名前もへきるだったはず…。

偶然にしては出来すぎている。

まさかこの子は、子供の頃の…。

「本当に有難うございました」

上の空で話を聞いているうちに、母親と女の子は手を繋いで去っていく。

「またねーお兄ちゃん。ばいばーいっ」

真相はつかめないまま、ただ女の子だけが、無邪気に手を振っていた。