キーホルダーを手にご機嫌の女の子を連れて、デパートの中を歩く。

そろそろ迷子センターに連れて行ったほうがいいだろう。

さっき聞いた場所へと、女の子を連れて行く。

そういえば、名前くらいは聞いておいた方がいいかもな。

「名前、言える?」

「んとねー」

キーホルダーを熱心に弄りながら、女の子は考えるような仕草を見せる。

と。

「へきる!」

前方から、二十代後半くらいの女性が走ってきた。

女の子の母親だろうか。

「あ、ママ!」

案の定母親だったらしく、女の子は駆けていった。

「ママー…」

母親の顔を見て安心したのか、抱きついて急にべそをかく女の子。

何とも微笑ましい光景だった。

「…へきる、このキーホルダーどうしたの?」

母親が、女の子の持っているキーホルダーに気づく。

「助けてくれたお兄ちゃんがくれたの」

そう言って、女の子は俺の方を指差した。