デパートの中を、当てもなくふらふらと歩く。

すれ違う買い物客が不審そうな目で俺を見るけど、構いやしなかった。

帰る場所は勿論、今日体を休める場所さえないんだ。

人目なんて気にしている余裕はない。

虚ろな目のまま、店内をさ迷い歩く。

…ふと、耳に泣き声が届いた。

下を向いていた顔を少し上げ、前方を見る。

子供が泣いていた。

四歳くらいの女の子。

髪の毛をてっぺん近くでゴムでくくってちょんまげみたいにした、快活そうな子だった。

が、この年齢なら、幾ら快活だろうと一人は不安らしい。

多分迷子になったんだろう。

そうか、お前も迷子か。

俺と一緒だな。

俺は時間の迷子だけどさ。

ワンワン泣きじゃくる女の子の隣をふらふらと通り過ぎていく。

生憎と今の俺には、人助けしている余裕はない。

むしろ俺の方が助けて欲しいくらいだぜ。

女の子の泣き声を聞かない振りをして遠ざかっていく。

通り過ぎていく…つもりだった。

「……」

立ち止まり、振り返る。

女の子は泣いている。

俺の方を見て、大粒の涙をこぼしながら泣いている。

不安なんだろう。

怖いんだろう。

寂しいんだろう。

そうだよな、一人ぼっちって辛いし、怖いよな。

誰でもいい、助けて欲しくて、すがりつきたくなるよな。

わかるよ。

今の俺もそうだから。

「どした、迷子か?」

気がつくと、俺は女の子の目の前にしゃがみ込んで話しかけていた。