ぐらりとよろめく感覚に、必死に足を踏ん張る。

11年前…11年前だって?

俺が四歳の時だぞ?

だったら今ここにいる十五歳の俺は何なんだ?

混乱のあまり吐き気さえしてくる。

立っているのも辛くて、俺は結局出てきたトイレの個室に、もう一度戻って気持ちを落ち着ける事にした。






個室に入り、鍵をかけ、大きく深呼吸する。

トイレで深呼吸というのもどうかと思ったが、何せ緊急事態だ。

この際そんなことは言っていられない。

…眉間を押さえつつ、考える。

時間移動…って奴か?

これが夢じゃないとしたら、俺は俺のいた時代から、11年前のこの時代に時間移動したとしか考えられない。

「時間移動って…どこのB級映画だよ…」

自分の仮説に自嘲しつつ、それでも他に考えられないのも事実だった。