「ということで、2人だけでどこかに出かけよう」 

「たまにはいいのかな?」

 行く気になってくれてるみたいから、間髪入れずに押し切らなくちゃ。


「いいんだよ。時には息抜きもしなきゃ。陽菜、行き先考えておいて」

「うん。わかった」

 ちょっと考えていた陽菜が頷いてくれた。

「じゃ、決まりだね。ココア入れ直してくるね」


 僕はカップを手にしてキッチンへと歩いて行った。


 ココアの準備をしながら考える。



 ここのキッチンもリビングも2人だけの空間が出来上がっていて、居心地はいいんだけど。

 家族の域は越えられない。


 今までとは違う非日常的なことも取り入れていかないとね。

 急激に変わることはリスクが高すぎて出来ないから、少しずつ、徐々に変えていけばいい。


 誰にも陽菜を取られたくないからね。


 僕も本気になろうと思う。



「陽菜、お待たせ」

 僕は陽菜にココアを手渡す。


 陽菜がにこっと笑みを返してくれる。



 きっと僕の気持ちなんて知らない、陽菜の無垢な笑顔が僕には眩しかった。






(終)