陽菜が顔を上げる仕草をしたから、僕は腕の力を抜いた。

 びっくりした顔してるね。

「急にどうしたの?」

「たまには外を眺めてみるのもいいんじゃないかなって思って。いつもバドミントンで1日が終わっちゃうから、最近はどこにも行ってないでしょ」

「そうだね。歩夢と出掛けたのはいつだったけ?」

 思い出せもしないほど、昔のこと。


「陽菜が小3とかの頃じゃない?」

「そんな前? どこに行ったけ?」

 ほらね、ホント覚えてない。

 小4で部活をし始めて、航太が加わったらほとんど休みもなくなったから、家にいることの方が多くなった。


「動物園」

「へえ、そうなの? よく覚えてるね」

 感心したように僕を見ているけど、行きたいと言い出したのは陽菜なんだけどな。



 そんなことも忘れちゃってるんだね。